物語『チムちゃんのあさつゆ』第33話

ささみつあみあみ

2023年02月14日 19:40

 おばんどす

 私の作った物語『チムちゃんのあさつゆ』
第33話目です。

では、前回から続き。
本文どす。


ささみつあみあみメルヘンシリーズ          ※このお話はフィクションです

             チムちゃんのあさつゆ

           第33話「ハートリーさんのお母さん」

 2023年2月14日の火曜日。今日はバレンタインデーです。ハコトビィ ハートリーさんが転入してきて二日目です。
 「おはよう。」
「おはよ。」
「おはようさん。」朝、多田梨中の生徒達は口々にあいさつの言葉を口にします。ハートリーさんはハートリーさんのお母さんと一緒に登校しました。
「ハートリーさん、おはよう。」チムちゃんはハートリーさんにおはようを言いましたが、ハートリーさんは、
「…………。」無言。ハートリーさんからの返答はありません。ハートリーさんはしゃべることが出来ないのです。表情も変えず、真っ白い、雪のようなお顔で、どこを見ているとも見ていないとも分からない瞳をしているハートリーさんなのです。
 「ごめんなさいね。うちの子、返事できなくて……。」ハートリーさんのお母さんはとてもかなしそうな顔で言いました。チムちゃんは、
「あ、いえ……。大丈夫です。」なんと返事して良いのか、ハートリーさんのお母さんになんと言えば良いのか分かりません。
 きんこんかんこん。きんこんかんこん。多田梨中学校の優しい鐘の音が響きました。朝の学活が始まりました。担任の立石先生は、
「えーと。昨日から、ハートリーさんが私たちの教室に転入してきましたが、事情により、ハートリーさんのお母さんも一緒にお越しになられています。」と、二重敬語で言いました。ハートリーさんのお母さんは、
「娘は、親がいないと何も出来ないのです。付きっきりの介護が必要なのです。ウウ……。」と言って泣きました。チムちゃんは、
「泣かないでください。」とハートリーさんのお母さんに言いましたが、ハートリーさんのお母さんの涙は止まりません。その間、ハートリーさん本人は、
「…………。」無言で微動だにしません。

↑ハートリーさん(左)を心配するチムちゃん(右)
 みんな、ハートリーさんのことを心配しています。チムちゃんに至っては、涙が止まらないハートリーさんのお母さんのことも心配でした。
「ハートリーさんのお母さん、あのままでは悲しみでおなか壊すわ。」チムちゃんはそう心配しています。
 「…………。」授業中、ハートリーさんは何も言わずに立ち上がりました。みんなハートリーさんに注目しました。
「ハートリーさん、どうしたん?」立石先生は、
「ハートリーさん、どうしたんですか?」と言いました。すると、ハートリーさんのお母さんが、
「娘は、トイレに行きたいのです。急に立ち上がるのがトイレのサインなのです。」と言いました。立石先生は、
「そ、それでは、ハートリーさん、お母さんと一緒にトイレに行ってきてください。」と言いました。ハートリーさんのお母さんは、
「それではすみません、ちょっと失礼します。」と言って、立ち上がり、ハートリーさんを連れて教室を出ました。
 「がしゃん。」と、教室の戸が閉まると、教室の中はざわめきました。
「ハートリーさん、かわいそう!」
「私たち、ハートリーさんにどうすれば良いの?」
「先生!ハートリーさんを助けて!」
と言った声が飛びました。立石先生は、
「先生も、どうすれば良いのか分からないんだ……。」と、困りました。
 如月ちゃんが、
「ハートリーさん、かわいそうだよ。なんとかして助けたいよ。」と言いました。立石先生は、
「うん、それは先生も同じだ。だけどね、どうすれば良いのか本当に分からないんだよー。」と言って困りました。
「うっうっ……。」教室のドアの外から泣き声が聞こえました。ハートリーさんのお母さんの声です。ハートリーさんのお母さんは、
「みんなでうちの娘の心配をしてくれて、本当にありがとう……。わあーっ!」ハートリーさんのお母さんはそう言って号泣しました。クラスメイト達は、ハートリーさんのお母さんの事も心配になりました。
「ハートリーさんのお母さん、このままでは心配と悲しみで絶対におなか壊す。」みんな心配しています。
 お昼休み、ハートリーさんは黙々と表情も変えず、何も言わずに給食を食べました。食べることは覚えているのです。
 放課後、
「ハートリーさんのお母さん、とってもつらそう。お母さんも助けてあげたいね。」と、如月ちゃんが言いました。するとチムちゃんが、
「ねりくんがいればなあ……。」と言いました。

ねりくんとは、別の中学校のおともだちのあの妖精のねりくんです。立石先生は、
「ねりくん?ねりくんがどうにかしてくれるのかい?」とチムちゃんに聞きました。チムちゃんは、
「ねりくんなら、ハートリーさんのお母さんの悲しみを癒やすことが出来るかもしれません。」と言いました。如月ちゃんは、
「ねりくんって、そういう力あるの?」と言いました。するとチムちゃんは、
「甘いな。ねりくんに秘められた力を私は知っています。ねりくんに秘められた力。それは優しさと愛情……。」チムちゃんは静かに言いました。
 ねりくんはどのような力を持っているのでしょうか?それで、今日はバレンタインデーなのですが、チムちゃんのクラスの人々はハートリーさんのことで頭がいっぱいであり、「バレンタインデー」という行事のことはすっかり忘れていたのでした。
 さあ、ハートリーさん、どうなるの?


第33話終わり        34話に続きます 

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